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2007年5月 1日 (火)

0013 メイドロイド™の、サーボモーターの考察

 まずは、極々簡単な設計でも、等身大のメイドロイド™を短時間動作させる事は充分に可能だという事が確認できました。
 現代のメカトロニクス技術は大変な進歩を遂げており、日に日に開発されるインフラを利用するだけで、特別な技術がなくともロボットの制作が可能だと言うのは、大きな驚きでございます。
 今後も更に進歩が進み、もっと高度な部品も次々と登場する事でしょう。

 今回は、開発が簡単に進むように、周囲のインフラの多い近藤科学のサーボモーターを使用しております。
 周辺部品が多く、手に入りやすいと言うのが一番大きな選択理由でございましたが、パルスストレッチやポジションキャプチャーなどのロボットに必要な機能と、簡易なPWM制御と、高度なシリアル接続のコマンド式のどちらでも制御もできるという点でも魅力を感じました。
 PWMとコマンド式の双方で制御できると言うのは、簡単な所から手を付けて、少しずつステップアップしながら開発を進める事ができますので、とても有意義な機能かと存じます。
 また、大トルク、大動作角のKRS-4014HVという製品がありましたのも、大変重要でございます。
 昔は、小さなサーボモーターを一つ取り付けただけの肘関節で、1kgもの物をカールで持ち上げる事は不可能でございました。
 これは大変な驚きでございます。
 短時間の動作でしたら、様々な動きができる事でしょう。
 

 しかし、これで完璧というわけではございません。
 長時間、物を持ち続ける場合となりますと、話は少々変わってまいります。
 『熱』の問題でございます。
 ロボット用サーボモーターは、主に、ロボットによる競技やデモンストレーション演技用に設計されております。
 これらの用途ですと、万一関節がロックした際でも過負荷は短時間ですので、パワーリダクションで脱力する事さえ可能であれば、特別な熱対策の必要性は少ないでしょう。
 しかし日常用途となりますと、演技や競技よりも長い時間、物を持ち上げた状態が続く事もございます。
 その場合は、常時負荷がかかった状態になりますので、内部のモーターやドライバー回路の温度が上昇を始めます。
 温度は、加熱量と加熱時間で上昇します。
 サーボモーターの負荷が大きければ短時間で大きく加熱します。
 負荷が小さくても、長時間続けば加熱は進みます。
 そして、サーボモーターの放熱速度と、内部の加熱速度が釣り合った所で平衡し、温度上昇が止まります。
 放熱が間に合わなかった分の熱は、内部に蓄積されていき、温度が上昇していきます。
 温度が高いほど放熱率が上がりますので、加熱が勝っている場合は、加熱と同じ量の放熱ができる温度まで上がろうとします。
 そして、温度が限界を超えると、ドライバー回路の半導体やモーターの絶縁が破壊され、焼損してしまいます。
 いくらKRS-4014HVの起動トルクが40.8kg・cmもあると申しましても、それは瞬間的なものでございます。
 常温環境下でサーボモーターの放熱速度と加熱速度が釣り合う限界は、もっともっと低いトルク下になります。

 熱対策は、いくつか考えられます。
 一つは、サーボモーターを大きなものにする方法です。
 余裕ができれば異常加熱も減りますし、熱容量も大きくなって耐性も高くなります。
 しかし、それではメイドロイドの形に治まりきりませんので、今回は除外いたします。

 モーターの初段の減速に、ウォームギアを使うという方法もございます。
 出力軸からの反力がモーターに帰りませんので、長時間負荷を維持してもモーターの加熱はあまり進みません。
 反面、出力軸からの反力で帰らないという事は、教示機能が使えませんし、パルスストレッチや弾性制御などのコンプライアンス制御もできません。

 他の方法としましては、負荷をかけない事でございます。
 放熱速度と加熱速度が釣り合うよりも下の負荷で使用する限りは、長時間の負荷をかけても焼損する事はございません。
 例えば双葉電子産業のロボット用サーボモーターの場合は、モーター電流を監視する事で負荷を検知できますので、それによって過負荷をかけないプログラムをすれば、異常加熱を回避する事ができます。
 しかし、それだけですと、最大トルクを発揮しませんから、サーボモーターの性能を生かし切る事ができません。

 もう一つの方法は、放熱性を上げる事でございます。
 放熱速度を上げる事で、加熱速度の余裕をとる事ができます。
 しかし、これも完璧な解決策ではございません。
 放熱性が良くなりますと、余裕こそとれますが、どれだけ熱的な余裕があるかまでは分かりませんので、限界がくればやはり焼損してしまいます。
 最大トルクでも焼けないほど能力の高い放熱器が使用できれば問題はないのですが、限界重量を持ち上げて最大トルクを出している時は、サーボモーターがロックしているのと同じで、モーターはヒーターと同じ状態になっております。
 それを冷やし続けるのは、少々困難にございます。

 そして、もう一つの対策として、温度センサーを使う方法がございます。
 やはりこれも双葉電子のロボット用サーボモーターですが、温度センサーを内蔵しており、加熱した際に安全策をとる製品がございます。
 こういった製品を使用したり、別途サーボモーター内に温度センサーを取り付けたりすれば、サーボモーターが焼損する前に安全策を取る事が可能となります。
 長時間の低負荷駆動の直後や、高負荷時の熱がまだ残っている時に連続して使用しますと、大きな負荷をかけていないにも関わらず突然サーボモーターが焼損する事がございますが、温度センサーを使用いたしますと、そういった事故を未然に防ぐ事もできます。
 一番単純な方法としましては、設定温度まで加熱しましたら、動作を止めるという方法がございます。
 しかしこれでは突然動作が停止しますので、転倒や把持しているワークの落下という危険もございます。
 特に、異常加熱は大きな負荷がかかっている状態である事が多いですから、急な脱力は危険を伴う可能性がございます。
 その場合、例えば、モーターの温度上昇に応じて、パルスストレッチを次第に大きくしていくと言う方法もあるかと思います。
 人間の筋肉疲労を真似て、負荷を受けなくしてやる事で、あるていど動作を維持しながらサーボモーターの加熱を抑えようという考えでございます。
 高負荷時の一時的な急加熱さえ回避できれば、軽負荷時に放熱を進める事で、動作を止める事なく現状復帰が可能となります。
 このように、一気に停止するのではなく、加熱が進むと警告を出しながら、除々に脱力して行くのが望ましいかと考えます。
 本当に危険温度時に近くなった時には、角度信号とポジションの差が最大でもトルクがゼロになるくらいまでパルスストレッチを上げる事ができれば、筋肉疲労を真似ながらモーターを保護する事が可能となります。
 しかし、現状のKRS-4014HVでは、そこまで広いパルスストレッチの幅はございませんし、線形、非線型の設定もできませんので、パルスストレッチ最大の次はパワーリダクションという順になるかと思います。

 双葉電子工業のロボット用サーボモーター、例えばRS601CRなどは、負荷の検出、温度センサー、弾性制御など、この種の制御に必要な機能を多く内蔵しておりますので、この種の高度な制御には適しているかと思います。

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 強度の高い中空貫通軸と、放熱面積部分の広いケース、直交軸や片持ち設計がやりやすい形状、キャリブリーションをとってあるため個体差が小さいなど、色々と利点も多いサーボモーターです。
 ネジが普及率の低い径のため、開発や設計がやりにくい点と、製品ラインナップにこのもう一段上のトルクのタイプがない事を除けば、色々と興味深いシリーズでございます。

 ただ残念な事に、現状では研究機関向けに販売しているとの事で、日本で最もロボットキットを扱っている九十九電機ロボット王国や、展示販売しているLAOXですら即時購入ができなかったほど販売網が狭く、入手に手間がかかります。
 また、用意されておりますモーションソフトは3D表示もできる高度なものでございますが、それ故に、オリジナルで設計したロボットに使用しますには関節数と位置とサーボモーターの配置を組み替えられないために、汎用性が低うございます。
 無線LANで高度な制御も可能なプロセッサユニットRPU-100も、シリアル接続のコマンド方式のみでの制御ですので、簡易なPWMのシステムから少しずつ移行する事ができませんし、種類の豊富なPWMサーボとの併用もできません。
 また、これらシステムの価格も高価でございます。

 競技や演技とは目的が違うが故に、メイドロイドには適した機能が多いのですが、制御に関して初心者同様の私めには、色々とハードルが高いのがとても残念でございます。

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